ここでは航空局長通達 「航空身体検査マニュアル (平成19年3月2日制定、国空乗第531号)」を掲載しています。 航空に関するあらゆる情報・サービスを24時間態勢でご提供します。0120-777-204

航空身体検査マニュアル
  (平成19年3月2日制定、国空乗第531号)

T.目 的
このマニュアルは、航空機の安全な運航を確保する目的のために行われる航空身体検査証明において、航空機乗組員の心身の状態が航空法施行規則別表第四の「身体検査基準」に適合するかどうかについて検査及び判定を行うにあたり、その検査及び判定の方法の適正かつ統一的な運用を図るための指針である。

U.航空身体検査及び証明実施上の一般的な注意及び手続き
1.航空身体検査証明の意義
 1−1 航空機の安全な運航を確保するため、航空機に乗り組んでその運航を行う者に対して、その業務を遂行するために必要な心身の状態を保持しているかどうか検査し、これを保持している者にのみ航空身体検査証明を行う。航空身体検査証明を有していなければ航空業務を行ってはならない。
 1−2 航空業務を遂行するために必要な心身の状態を保持しているかどうか、すなわち航空医学的な適性があるかどうか検査及び判定を行うために、身体検査基準(航空法施行規則別表第四)及びこのマニュアルが定められている。
 1−3 航空身体検査証明の有効期間は航空法第33条に規定されているとおり、定期運送用操縦士の資格を有する者は6月、その他の者は1年である。 身体検査は、これを行う時点における心身の状態について断面的な検査を行うものであり、航空身体検査証明は、その有効期間中、航空業務に支障を生ずることがないことを保証するものではない。航空法第71条には、航空機乗組員は、身体検査基準に適合しなくなったときは、航空身体検査証明の有効期間中であっても航空業務を行ってはならないと規定されている。
 1−4 航空医学的な適性と良好な健康状態は必ずしも同義ではなく、健康であっても不適合と判定される場合もあるし、逆に、完全な健康状態と言えないまでも適合と判定されることもあり得る。航空医学的な適性があるということは、以下の状態を意味する。
 (1)航空業務を実施するために必要な心身の状態を保持し、その状態が飛行のあらゆる状況下で安全に飛行するために必要な水準以上である。
 (2)その状態を航空身体検査証明書の有効期間中引き続き維持していると予想される。特に、飛行中の急性機能喪失(インキャパシテーション)は航空の安全にとって重大な脅威であることから、急性機能喪失を起こすリスクを排除することが重要である。

2.指定医の責務
 2−1 指定航空身体検査医(以下「指定医」という。)は、航空法第31条 第1項に基づき航空身体検査証明を行う権限を与えられている。
 2−2 指定医は、航空法第31条第3項の規定に従い、身体検査を行う場合において、身体検査基準を検査結果に適用するときは、この航空身体検査マニュアルに従い厳正かつ慎重に行わなければならない。この場合において、検査結果が身体検査基準に適合するか否か不分明なときは、航空身体検査証明を行ってはならない。
 2−3 指定医は、申請者が虚偽の申告やその他の不正な手段により航空身体検査証明書の交付を受けようとしたと認められる場合には、航空法施行規則第61条の3第3項の規定に従って、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に報告しなければならない。
 2−4 指定医が航空法第31条第3項の身体検査基準に適合しない者について航空身体検査証明を行うと、航空機の安全な運航に支障を及ぼすおそれがあるため、航空法第149条の2には、この場合の指定医に対する罰則が設けられている。

3.身体検査の方法
 3−1 指定医、又は航空身体検査指定機関において検査に従事する医師(以下「検査医」という。)は、申請者が申告した既往歴、医薬品の使用等について問診によりその事実を確認するよう努めなければならない。この場合、指定医又は検査医は申請者の同意を得たうえ、申請者の日常の健康管理を担当している医師、家族等から必要に応じて所要の情報を入手し、既往歴、医薬品の使用等を確実に把握するよう努めなければならない。
 3−2 指定医は、検査医及び検査の一部を依頼した他の医療機関等に対し、航空身体検査証明制度について十分に理解させるとともに、自己の責任の下に航空身体検査証明を行わなければならない。
 3−3 指定医は、申請者が常用している医薬品の使用により、航空機の正常な運航ができないおそれがあると認められる場合は不適合とする。その医薬品の使用により、航空機の正常な運航ができないおそれがあるかどうか不明な場合は不適合とし、国土交通大臣の判定を受けること。この場合、疾患の背景・医薬品の使用に起因する効果等を詳述して申請すること。
 3−4 申請者が一時的に医薬品を使用している場合において、身体検査結果に影響を及ぼしていると判断された時は、医薬品の使用が終了した後に受検させるものとする。
 3−5 指定医又は検査医は、既往歴、問診及び検査を行った結果及び所見、医薬品を使用している場合には副作用の有無、その他判定の根拠となる事項を必ず航空身体検査証明申請書の医師記入欄に記入すること。

4.大臣判定申請
 4−1 指定医は、航空身体検査の結果、不適合と判定した申請者に対し、航空法施行規則第61条の2第3項による国土交通大臣の判定(以下「国土交通大臣の判定」という。)を受けることができる旨を通知すること。指定医は、申請者が国土交通大臣の判定を受けようとするときは、航空身体検査証明申請書の写しに必要な検査資料等を添付して、国土交通省航空局技術部乗員課あて提出すること。
なお、必要な資料は、V.航空身体検査項目等の備考欄に示しているので参考にすること。
 4−2 国土交通大臣の判定において、申請者が航空業務を行うのに支障を生じるかどうか評価を行うため、実機又は模擬飛行装置等を用いて操縦室における運動機能等に関するチェック又は医学的飛行試験を要求する場合がある。また、申請者が提出した検査資料等に不足や疑義がある場合、その他評価のために必要と認める場合には、他の医療機関で受けた検査資料等の提出を要求する場合がある。
 4−3 国土交通大臣は、必要があると認めるときは、国土交通大臣の判定において適合するとみなされた者が新たに航空身体検査証明を申請する場合は、当該者に対し、航空法施行規則別表第四の規定の一部に適合しない原因となった傷病の症状の検査等を受けるべきこと等を指示することができる。
 4−4 国土交通大臣の判定を申請し、国土交通大臣が適合するとみなす判定をした者(4−5の特別判定指示を受けた者を含む。)のうち、病態又は身体的異常が完治、欠損治癒又は固定し、航空業務に支障を来すおそれのある状態に進行しないと認められるものは、国土交通大臣の指示(ケースクローズ指示)に基づき、それ以降の身体検査においては、指定医は当該事項について基準に適合すると判定してよい。
 4−5 国土交通大臣の判定を申請し、国土交通大臣が適合するとみなす判定をした者のうち、所見が安定しているとして国土交通大臣が特に指示(特別判定指示)するものは、それ以降の更新時の身体検査においては、国土交通大臣が当該者及び指定医に対して別途通知する事項に関して行った検査の結果に新たな変化が認められなければ、当該指定医は当該事項について基準に適合すると判定してよい。

5.個人情報の保護
 5−1 指定医は、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)等に基づき、個人情報の適正な取扱いを行うこと。
 5−2 指定医は、法令に基づく場合等を除き、申請者本人の同意を得ないで、航空身体検査証明以外の目的で、身体検査で知り得た情報を取り扱ってはならない。
 5−3 国土交通大臣は、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)」第8条に従って、法令に基づく場合を除き、航空身体検査証明以外の目的のために個人情報を利用し、又は提供しない。

6.その他
指定医は自らの航空身体検査証明を行ってはならない。

V.航空身体検査項目等
各検査項目における構成は、以下の統一的な考え方に基づいている。
1.身体検査基準
 航空法施行規則別表第四の規定
2.不適合状態
 一般的・包括的な規定である「1.身体検査基準」をできる限り具体的な疾患、機能異常等の状態として記載。なお、全ての不適合状態を規定することは困難であることから、規定されていない状態であっても、「1.身体検査基準」に照らして慎重に判断すること。
3.検査方法及び検査上の注意
 航空身体検査の方法、実施時期・間隔、注意事項等
4.評価上の注意
 問診、検査結果等の評価・判定を行うに当たっての注意事項等
5.備考
 大臣判定申請に必要な検査資料等の大臣判定申請をする際に参考となる情報のほか、各種の参考情報

1.一般
 1−1 全身状態−1
 1−2 全身状態−2
 1−3 腫 瘍
 1−4 感染症
 1−5 内分泌及び代謝疾患
 1−6 リウマチ性疾患、膠原病又は免疫不全症
 1−7 アレルギー疾患
 1−8 睡眠障害
2.呼吸器系
 2−1 呼吸器疾患
 2−2 気 胸
 2−3 胸部手術
3.循環器系
 3一1 血圧異常
 3−2 心筋障害
 3−3 冠動脈疾患
 3−4 先天性心疾患
 3−5 後天性弁膜疾患
 3−6 心膜疾患
 3−7 心不全
 3−8 調律異常
 3−9 脈管障害
4.消化器系
 4−1 消化器疾患
 4−2 消化器外科疾患
5.血液及び造血臓器
6.腎、泌尿器及び生殖器系
 6−1 腎疾患
 6−2 泌尿器系疾患
 6−3 生殖器系疾患
 6−4 妊 娠
7.運動器系
 7−1 運動器の奇形、変形若しくは欠損又は機能障書
 7−2 脊柱疾患
8.精神及び神経系
 8−1 精神病及び神経症等
 8−2 パーソナリティ(人格)障害及び行動障害
 8−3 薬物依存及びアルコール依存
 8−4 てんかん
 8−5 意識障害等
 8−6 頭部外傷
 8−7 中枢神経系統の障害
 8−8 末梢神経系統及び自律神経系統の障害
9.眼
 9−1 外眼部及び眼球附属器
 9−2 緑内障
 9−3 中間透光体、眼底及び視路
10.視機能
 10−1 遠見視力
 10−2 中距離視力
 10−3 近見視力
 10−4 両眼視機能
 10−5 視 野
 10−6 眼球運動
 10−7 色 覚
11.耳鼻咽喉
 11−1 内耳、中耳及び外耳
 11−2 平衡機能
 11−3 鼓 膜
 11−4 耳 管
 11−5 鼻 腔、副鼻腔及び咽喉頭
 11−6 鼻中隔
 11−7 吃、発声障害及び言語障害
12.聴 力
13.口腔及び歯芽
14.総 合

1.一 般
 1−1 全身状態−1
1.身体検査基準
 頭部、顔面、頸部、躯幹又は四肢に航空業務に支障を来すおそれのある奇形、変形又は機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 航空業務に支障を来す奇形、変形又は機能障害
 2−2 酸素マスク等航空装具の着用を妨げる奇形、変形又は機能障害
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 術後及び外傷後については、7.運動器系も参照し、機能障害の有無を評価すること。
 3−2 側彎症又は後彎症については、航空業務に支障を来すおそれがなく、呼吸機能低下がないと認められた場合は適合とする。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 何らかの奇形、変形又は機能障害を有する者で、航空業務に支障を来すか否かの評価が困難な場合は、国土交通大臣の判定を受けることが必要である。この場合、臨床経過及び現在の可動域、筋力等の運動機能についての評価等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、身体所見に変化する可能性がなく、航空業務に支障を来すおそれがないことが確認されたものは、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 1−2 全身状態−2
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある過度の肥満がないこと。
2.不適合状態
 航空業務に支障を来すおそれのある過度の肥満
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 肥満は、動脈硬化及び心血管系疾患の重要な危険因子の一つであり、体容量指数(BMI)30を超える高度の肥満の場合には、心血管系疾患に関する他の危険因子の有無について検討し、乗務中の急性機能喪失の危険性を勘案して判定すること。また、操縦操作等に支障がないことも評価すること。なお、BMIの算出は、次の式による。
   体容量指数(BMI)=体重(Kg)/身長(m)2

5.備 考

 1−3 腫 瘍
1.身体検査基準
 悪性腫瘍若しくはその既往歴若しくは悪性腫瘍の疑いがないこと又は航空業務に支障を来すおそれのある良性腫瘍がないこと。
2.不適合状態
 2−1 悪性腫瘍又はその疑いがあるもの
 2−2 悪性腫瘍の既往歴があるもの
 2−3 悪性腫瘍に関わる治療中のもの
 2−4 航空業務に支障を来すおそれのある良性腫瘍
3.検査方法及び検査上の注意
 悪性腫瘍の既往歴又は疑いがあるものは、画像検査、腫瘍マーカー等により十分に検討を行うこと。
4.評価上の注意
 良性腫瘍については、航空業務に支障を来すおそれがないと判断されたものについては適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者のうち、治療中又は治療後で経過良好であり、当該臓器の機能及び運動機能が航空業務に支障を来すおそれがないと考えられる者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、治療内容の詳細(手術を行った場合は、手術記録、癌取扱規約、TNM分類等による病理診断結果、手術後の諸検査結果を含む。)及び再発・転移の徴候を否定する十分な経過観察の所見等(腫瘍マーカー、画像検査等)を付して申請すること。術後の観察期間については、各疾患の項を参照のこと。
 5−2 上記5−1の者のうち、治療後十分な経過観察期間を経て、再発及び転移の所見がないものは、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 1−4 感染症
1.身体検査基準
 重大な感染症又はその疑いがないこと。
2.不適合状態
 2−1 後天性免疫不全症候群(AIDS)
 2−2 ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)脳症
 2−3 治療中のHIV感染症
 2−4 活動性のある結核
 2−5 その他航空業務に支障を来すおそれのある感染症
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 4−1 HIV感染症については、認知機能に異常がなく、AIDSでないことが確認されれば適合とする。ただし、治療中のものは不適合とする。
 4−2 肝炎については、4.消化器系4−1消化器疾患を参照のこと。
 4−3 結核については、2.呼吸器系2−1呼吸器疾患も参照し、呼吸機能にも注意すること。
 4−4 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」で規定されている疾患については、これに従って対応すること。
5.備 考

 1−5 内分泌及び代謝疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある内分泌疾患若しくは代謝疾患又はこれらに基づく臓器障害若しくは機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 甲状腺疾患で治療を必要とするもの
 2−2 下垂体疾患、副腎疾患又は副甲状腺疾患
 2−3 常時インスリン又は経口血糖降下薬を必要とする糖尿病
 2−4 痛風又は痛風発作のおそれがある高尿酸血症
 2−5 臓器障害のおそれがある高脂血症
 2−6 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
 2−7 内分泌疾患の手術歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 甲状腺疾患の既往歴があるか、又はその疑いがある場合は、甲状腺機能検査を実施すること。
 3−2 糖代謝異常が疑われる場合は、糖尿病の有無について検討すること。
 3−3 その他の内分泌疾患又は代謝疾患が疑われる場合には、血液検査、画像検査等を行い確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 甲状腺疾患(術後及びアイソトープ治療後を含む。)でホルモン補充療法中の者で、薬剤の用法用量が一定した後、少なくとも1ヶ月間経過観察し、FT3、FT4が安定して推移し、かつ、無症状のものは適合とする。
 4−2 甲状腺機能亢進症で、アイソトープ治療後、FT3、FT4が少なくとも1ヶ月間安定して経過し、かつ、無症状のものは適合とする。
 4−3 糖吸収阻害薬の投与については、投与開始後、少なくとも1ヶ月以上の観察期間を経て、血糖が適切にコントロールされており、薬剤の副作用がない場合には適合とする。この際、食後血糖についても検討し、低血糖及び高血糖の可能性について十分勘案することが必要である。
 4−4 糖尿病による細小血管障害の発症進展抑制のためには、HbA1c6.5%未満が目標とされている(日本糖尿病学会2004)。この値を参考として血糖をコントロールすることが推奨される。
 4−5 痛風及び痛風発作のおそれがある高尿酸血症の者のうち、尿酸排泄薬、尿酸生成阻害薬、酸性尿改善薬を使用して、使用開始後十分な経過観察期間を経て、症状及び使用医薬品の副作用がなく、画像検査により尿路結石がないことが確認され、血清尿酸値が安定していることが確認されれば適合とする。
 4−6 高脂血症の治療のために、スタチン、プロブコール、フィブラート系薬、ニコチン酸系薬、エイコサペント酸エチル(EPA)、植物ステロール、陰イオン交換樹脂を使用する場合には、使用開始後、十分な経過観察期間を経て、血清脂質値が安定し、かつ、使用医薬品の副作用が認められず、高度の動脈硬化所見がないことが安静時心電図、眼底所見、頸部血管雑音等により確認されれば適合とする。インスリン感受性改善薬等、血糖に影響を与える可能性のある薬剤を使用する場合は不適合とする。
 4−7 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
5.備 考
 5−1 経口血糖降下薬、インスリン感受性改善薬等、糖吸収阻害薬以外の薬剤を必要とする糖尿病で、血糖が適切にコントロールされている者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、血糖及びHbA1cの推移を含む検査結果、合併症の有無、治療内容を含む臨床経過の詳細等を付して申請すること。
 5−2 高脂血症に対して血糖に影響を与える可能性のある薬剤を使用しており、血糖が適切にコントロールされている者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、血糖及びHbA1cの推移を含む検査結果、合併症の有無、治療内容を含む臨床経過の詳細等を付して申請すること。
 5−3 上記2.不適合状態の者で、下垂体疾患、副腎疾患又は副甲状腺疾患等の内分泌及び代謝疾患の手術歴のある者(内分泌機能が正常となり、治療を必要としなくなった者)が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、手術記録、手術後の内分泌検査結果及び現症や治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。
 5−4 上記5−1から5−3の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 1−6 リウマチ性疾患、膠原病又は免疫不全症
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのあるリウマチ性疾患、膠原病又は免疫不全症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 リウマチ及びリウマチ類縁疾患
 2−2 膠原病及び膠原病類縁疾患
 2−3 先天性又は後天性免疫不全症
3.検査方法及び検査上の注意
 上記疾患が疑われた場合には慎重に判断し、その活動性、併発疾患の有無等を確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 上記2−1、2−2又は先天性免疫不全症について、検査結果等を総合的に判断し、その活動性が認められない場合で、航空業務に支障を来すおそれがないと判断される場合は適合とする。
 4−2 後天性免疫不全症候群(AIDS)及びHIV感染症については、1.一般1−4感染症を参照のこと。
5.備 考
 5−1 上記2−1、2−2又は先天性免疫不全症の者で、一定の治療で活動性がなく航空業務に支障を来すおそれのある運動器障害のない者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、各種検査結果、活動性の有無についての検討や併発疾患の有無についての記録等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 1−7 アレルギー疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのあるアレルギー性疾患がないこと。
2.不適合状態
 2−1 高度の鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎
 2−2 アレルギー性結膜炎又はアレルギー性眼瞼炎
 2−3 アレルギー性皮膚疾患
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 気管支喘息については、2.呼吸器系2−1呼吸器疾患を参照のこと。
 3−2 病歴及び問診等により2.不適合状態が疑われる場合には、慎重に検討を行い、必要に応じて耳鼻咽喉科医、眼科医又は皮膚科医の診断により確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 上記2.の不適合状態については、掻痒、流涙又は鼻汁等の症状が軽微であり、航空業務に支障を来すおそれのない場合は、適合とする。
 4−2 アレルギー性の諸症状が外用薬(点鼻、点眼、軟膏、クリーム又はエアゾール等)又は減感作療法により抑制されている場合は、適合とする。内服薬を使用する場合は、鎮静作用のない抗ヒスタミン薬(第二世代の抗ヒスタミン薬に限る。)又は抗アレルギー薬で、過去の使用経験により、眠気・集中力低下等の副作用がないことが指定医又は航空医学に精通している航空会社の産業医により確認されれば適合とする。ただし、内服薬を服用後少なくとも通常投与間隔の2倍の時間は航空業務に従事してはならない。
5.備 考

 1−8 睡眠障害
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある眠気の原因となる睡眠障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 睡眠時無呼吸・低呼吸症候群
 2−2 その他航空業務に支障を来す睡眠障害
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 問診において、特に周囲からのいびき及び睡眠中の呼吸停止の指摘の有無、日中の過度の眠気の有無を確認すること。問診上、睡眠障害が疑われる場合は、さらにエポワス眠気尺度(ESS)等の検査を実施し、総合的に判断を行うこと。その結果、睡眠時無呼吸症候群を疑う場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、必要時には覚醒維持検査(MWT)を実施して十分な検討を行うこと。
 3−2 睡眠障害については、基礎疾患(耳鼻咽喉科、呼吸器科、歯科領域等)の有無についても十分な検討を行うこと。
 3−3 PSG検査は、以下の項目について検討を行うこと。
  ・呼吸モニター(鼻・口気流、胸部及び腹部の換気運動)
  ・酸素飽和度(SpO2)
  ・睡眠・覚醒・睡眠深度(脳波、眼球運動、頤筋電図)
  ・心電図検査
 3−4 MWTは20分法で、2時間以上間隔をあけて1日4回行い、覚醒を維持できた時間を測定すること。
4.評価上の注意
 4−1 上記2−1について、PSGの結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)≧15であった場合は不適合とする。
 4−2 PSGの結果、5≦AHI<15であった場合、ESSを含む問診を十分に確認し、日中の過度の眠気等がなく航空業務に支障を来すおそれがないと認めた場合は適合とする。
 4−3 睡眠障害に対して睡眠導入薬を使用する場合、酒石酸ゾルピデム及びゾピクロンについては、常習性及び依存性のないこと並びに事前に試用して服用48時間後には眠気・集中力低下がないことを指定医又は航空医学に精通している航空会社の産業医が確認した場合は、その使用を適合とする。ただし、服用後48時間以内は航空業務を行ってはならない。また、上記二つの薬剤以外の使用は不適合である(メラトニンを含む。)。
 4−4 睡眠障害に対してアルコールを使用することは避けるべきである。そのような習慣がある場合には、アルコール依存の有無について注意深く問診すること。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者で、治療により改善し、航空業務に支障を来すおそれがないと判断された者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、問診内容及び治療内容を含む臨床経過並びに治療前後のPSG検査結果及びMWT結果を付して申請すること。なお、マウスピース又はn−CPAPを使用している場合には、コンプライアンスについても記載すること。また、PSG及びMWTの方法については、3.検査方法及び検査上の注意を参照のこと。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な経過観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

2.呼吸器系
 2−1 呼吸器疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある呼吸器疾患又は胸膜・縦隔疾患がないこと。
2.不適合状態
 2-1 気管支喘息
 2-2 慢性閉塞性肺疾患
 2-3 慢性拘束性肺疾患
 2-4 サルコイドーシス
 2-5 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
 2-6 活動性のある肺結核症
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 胸部エックス線検査は、初回の航空身体検査時に実施すること。その後は問診・診察上必要と判断した場合に実施し、十分検討を行うこと。
 3−2 問診・診察上必要と判断した場合には、呼吸機能検査を行うこと。呼吸機能検査は、簡易スパイロメーターでよい。
 3−3 気管支喘息の既往歴がある場合は、問診の際に最近の発作の有無等に十分注意すること。
4.評価上の注意
 4−1 呼吸機能検査の結果、次の(1)又は(2)の場合は不適合とする。
  (1)%肺活量が80%以下のもの
  (2)1秒率(FEV1.0%)が70%以下のもの
 4−2 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−3 感染症については、1.一般1−4感染症を参照のこと。
5.備 考
 5−1 気管支喘息でコントロール良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容や発作の頻度を含む臨床経過、ピークフロー等の検査結果を付して申請すること。
 5−2 サルコイドーシスの診断を受けた者であって自覚症状がなく、かつ、治療を必要としないものが、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、血清カルシウム濃度、呼吸機能検査、67Gaシンチグラム検査を含む画像所見、心サルコイドーシスの評価、眼科的所見等の検査結果を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 2−2 気 胸
1.身体検査基準
 呼吸機能低下を来す呼吸器系の重大な疾患がないこと。
2.不適合状態
 自然気胸又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 自然気胸の既往歴がある場合、開胸手術後2ヶ月、内視鏡下手術後1ヶ月を経過した後、呼吸機能検査の結果が基準を満たし、航空業務に支障を来すおそれがないと認められた場合は適合とする。なお、呼吸機能検査の基準については、2.呼吸器系2−1呼吸器疾患を参照のこと。
5.備 考
 5−1 自然気胸の既往歴がある者であって、手術を受けていない者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、現症を含む臨床経過、胸部エックス線写真及び胸部CT(肺尖から2pについては5o間隔)等の画像所見を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 2−3 胸部手術
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある胸部の手術による後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2-1 開胸手術後2ヶ月を経過しないもの
 2-2 内視鏡下手術後1ヶ月を経過しないもの
 2-3 手術後、心肺機能に障害のあるもの又は心肺機能が航空業務により悪化するおそれのあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 胸部の手術歴がある場合は、原疾患について十分に問診を行い、必要に応じて手術時所見や病理診断書を参考にすること。
4.評価上の注意
 手術後の心機能及び呼吸機能を心臓超音波検査、呼吸機能検査等により確認すること。
5.備 考
 自然気胸の既往歴がある者であって、手術を受けていない者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、胸部エックス線写真及びCT写真(肺尖から2cmについては5mm間隔)等を付して申請すること。

3.循環器系
 3−1 血圧異常
1.身体検査基準
 収縮期血圧160oHg未満、拡張期血圧が95oHg未満であり、かつ、自覚症状を伴う起立性低血圧がないこと。
2.不適合状態
 2−1 高血圧
 2−2 自覚症状を伴う起立性低血圧
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 血圧値が基準値を超える場合には、必要に応じ繰り返して測定してもよいが、慎重に判断すること。
 3−2 降圧薬の使用の有無を問診により確認するとともに、服用中の場合はその副作用について十分な検討をすること。
 3−3 自覚症状を伴う起立性低血圧の疑いがある場合は起立耐性検査を実施するものとし、十分な安静臥位から起立し、2分後に立位の血圧を測定すること。
4.評価上の注意
 4−1 血圧値について、検査当日中に基準値内の血圧が得られない時は、1週間以内に再度測定し、基準値内にあることを確認すること。この場合、身体的所見等を総合的に評価し、異常のないことを確認すれば、適合とする。
 4−2 いわゆる白衣高血圧(普段は高血圧ではないが診察室において高血圧となる現象)の可能性がある場合は、24時間血圧計を使用し、平均135/80mmHg未満であり、かつ、早朝及び夜間高血圧が否定されれば適合とする。
 4−3 次に掲げる降圧薬を使用する場合であって、降圧薬の使用により血圧値が基準値を超えず、かつ、一定用量が維持されてから1ヶ月間を経過した後使用降圧薬による副作用が認められないときは、適合とする。
  (1)降圧利尿薬
  (2)カルシウム拮抗薬
  (3)β-遮断薬
  (4)ACE阻害薬
  (5)AU受容体拮抗薬
 4−4 降圧薬の減量の際は、少なくとも1ヶ月間は症状の有無、血圧測定等の経過観察を行い、安定した血圧値が得られていることを確認すること。
 4−5 逆白衣高血圧(診察時は血圧値が正常範囲内であるが、自由行動下で血圧高値となるもの)の可能性についても十分に注意すること。
 4−6 治療を必要とすると判断される高血圧の場合は、治療について説明を十分に行い、血圧管理がなされた後航空業務に従事することが望ましい。
5.備 考
 5−1 上記4−3に示した降圧薬以外の降圧薬を使用している者であって経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過及び血液生化学検査結果、安静時心電図、心臓超音波検査及び眼底所見等の所見を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−2 心筋障害
1.身体検査基準
 心筋障害又はその徴候がないこと。
2.不適合状態
 2−1 心筋症又はその疑いのあるもの
 2−2 心筋炎又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 安静時心電図検査は、初回の航空身体検査時及び30歳に達した後の最初の航空身体検査時に実施し、その後40歳に達するまでの間は、前回の検査から2年に1回の間隔で実施し、40歳に達した後は、前回の検査から1年に1回の間隔で実施すること。また、問診等により必要を認めた場合は、心電図検査を行い十分に検討すること。
4.評価上の注意
 4−1 心筋障害は航空の安全を脅かす疾患であるため、心電図の判読に当たっては、必要に応じて専門医の診断により確認すること。
 4−2 血液検査等で治癒が確認された心筋炎について、心臓超音波検査等で心機能に異常がない場合は、適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者で経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過及び安静時心電図検査、心臓超音波検査(ドップラー法)、核医学検査等の結果を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−3 冠動脈疾患
1.身体検査基準
 冠動脈疾患又はその徴候がないこと。
2.不適合状態
 2−1 心筋梗塞若しくは狭心症又はこれらの既往歴のあるもの
 2−2 無症候性心筋虚血又はその既往歴のあるもの
 2−3 冠動脈障害に対する治療歴のあるもの
  (1)経皮経管冠動脈形成術(PCI)
  (2)冠動脈バイパス術(CABG)
  (3)その他
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 安静時心電図検査は、3.循環器系及び脈管系3−2心筋障害、3.検査方法及び検査上の注意に準じる。
 3−2 安静時心電図所見又は臨床所見上、上記不適合状態が疑われる場合は、安全性を考慮した上で、必要に応じ運動負荷心電図検査及び核医学検査を実施し、十分な検討を行うこと。
 3−3 運動負荷心電図検査を行う場合、心拍数が年齢相当最大心拍数の85%以上になること。
  年齢相当最大心拍数=(220−年齢)回/分
4.評価上の注意
 4−1 冠動脈疾患は航空の安全を脅かす疾患であるため、心電図の判読に当たっては、必要に応じて専門医の診断により確認すること。
 4−2 運動負荷心電図及び核医学検査の判定については、専門医の診断により確認すること。
 4−3 安静時心電図所見及び臨床症状から上記2.不適合状態が疑われる場合で、運動負荷心電図で虚血を否定できない場合には、核医学検査で虚血所見が認められなければ適合とする。ただし、冠攣縮性狭心症の疑いのある場合は不適合とする。
5.備 考
 5−1 運動負荷心電図及び核医学検査において、心筋虚血を否定できない者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、安静時心電図、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、核医学検査及び必要に応じて心血管造影所見等を付して申請すること。
 5−2 冠動脈疾患により、PCI又はCABG等の冠動脈血行再建術による治療歴を有する者であって、手術後に心事故(cardiacevent)を呈さず、手術から1年間を無症候に経過している者で、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、安静時心電図、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、核医学検査、心血管造影所見等を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−4 先天性心疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと。
2.不適合状態
 2−1 チアノーゼ群又は遅発性チアノーゼ群のすべての先天性心脈管異常
 2−2 先天性心脈管異常により治療歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 診察に当たっては、心雑音に注意し、必要に応じて超音波検査を実施すること。
4.評価上の注意
 非チアノーゼ性心疾患については、専門医の診断により確認を行うこと。
5.備 考
 5−1 先天性心脈管異常の治療歴を有する者又は治療の必要がないと判断される者であって、航空業務に支障を来すおそれがないと認められる者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、安静時心電図及び心臓超音波検査結果、胸部レントゲン写真、自覚症状の有無、現症及び治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−5 後天性弁膜疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁膜疾患又はその既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 大動脈弁狭窄症
 2−2 大動脈弁閉鎖不全症
 2−3 僧帽弁狭窄症
 2−4 僧帽弁閉鎖不全症又は僧帽弁逸脱症候群
 2−5 三尖弁閉鎖不全症
 2−6 弁膜疾患の治療中又は治療歴のあるもの
3.検査方法及ぴ検査上の注意
 問診、身体所見、安静時心電図検査等から必要と考えられる場合は、心臓超音波検査を実施すること。
4.評価上の注意
 4−1 上記2.不適合状態について、心臓超音波検査(ドップラー法)で重症度がmild所見以内であり、かつ、航空業務に支障を来すおそれがない場合は適合とする。
 4−2 僧帽弁逸脱については、自覚症状、心電図異常(T波、不整脈)がなければ適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者であって経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、安静時心電図検査及び心臓超音波検査(ドップラー法)等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−6 心膜疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある心膜の疾患がないこと。
2.不適合状態
 心膜炎又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 診察に当たっては、心膜摩擦音に注意すること。また、原因疾患(感染、リウマチ性、膠原病等)については、十分に検討を行うこと。
4.評価上の注意
 血液検査等により、心膜炎の治癒が確認された後、心臓超音波検査等によって後遺症が認められない場合は適合とする。
5.備 考

 3−7 心不全
1.身体検査基準
 心不全又はその既往歴がないこと。
2.不適合状態
 心不全又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 心不全の疑いのあるものは、その原因疾患について慎重に診断すること。
4.評価上の注意
5.備 考

 3−8 調律異常
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある刺激生成又は興奮伝導の異常がないこと。
2.不適合状態
 2−1 洞機能不全症候群
 2−2 一過性若しくは持続性の上室頻拍又は心房粗細動又はその既往歴のあるもの
 2−3 心室頻拍又は多源性心室期外収縮が頻発するもの
 2−4 心室期外収縮のうち、連発を繰り返すもの又はRonTを示すもの
 2−5 第2度房室ブロック(モビッツU型)
 2−6 完全房室ブロック
 2−7 完全左脚ブロック
 2−8 完全右脚ブロック
 2−9 WPW症候群のうち、発作性頻拍を伴うもの又はその既往歴のあるもの
 2−10 先天性QT延長症候群
 2−11 ブルガダ症候群
 2−12 その他心電図上、重大な心疾患を推定できるもの
 2−13 人工心臓ペースメーカー又は植え込み型除細動器を装着しているもの
 2−14 調律異常に対して侵襲的治療(カテーテル心筋焼灼術等)を行ったもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 問診上、意識消失発作の既往等を十分に確認すること。
 3−2 心電図上不整脈が認められた場合は、ホルター心電図等により確認すること。
 3−3 徐脈を呈する者については、洞不全症候群の有無等について、十分な検討を行うこと。
4.評価上の注意
 完全右脚ブロックについて、初めて評価を行う際には、臨床症状がなく、心臓超音波検査、ホルター心電図検査、核医学検査等の結果、原因となる疾患のない場合は、適合とする。その後は、毎更新時に安静時心電図を確認し、経時的変化のないこと(PQ延長、QRS幅延長、軸偏位)を確認すること。ブルガダ症候群の存在については十分に留意すること。
5.備 考
 5−1 カテーテル心筋焼灼術後、6ヶ月以上ホルター心電図等による経過観察及び検討を行った後、病態が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、安静時心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査等の検査結果を付して申請すること。
 5−2 上記以外の2.不適合状態の者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過(血圧の推移等)、安静時心電図検査、運動負荷心電図検査、ホルター心電図検査、必要に応じて心臓超音波検査、核医学検査等を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 3−9 脈管障害
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある動脈疾患、静脈疾患又はリンパ系疾患が認められないこと。
2.不適合状態
 2−1 動脈疾患
  (1)末梢動脈閉塞性疾患
  (2)動脈瘤又はその治療歴のあるもの
  (3)レイノー症候群
 2−2 静脈疾患
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 動脈瘤の疑いがある場合は、画像検査等により慎重に診断すること。
 3−2 間歇跛行を呈する場合は、末梢動脈閉塞性疾患に注意すること。
 3−3 動脈硬化性の末梢動脈障害を認めた場合は、冠動脈及び頚動脈の病変に注意すること。
4.評価上の注意
 上記2−1(1)及び(3)について、基礎疾患を認めず、治療の必要がなく、航空業務に支障を来すおそれがないと判断された場合は、適合とする。
5.備 考
 5−1 動脈瘤術後(グラフト置換術等)、十分な観察期間を経て経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、手術記録や治療内容を含む臨床経過、凝固系を含む血液検査等を付して申請すること。
 5−2 脈管障害に対して治療後又は治療中で、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、凝固系を含む血液検査等を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

4.消化器系(口腔及び歯牙を除く。)
 4−1 消化器疾患
1.身体検査基準
 消化器及び腹膜に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 腹膜疾患又はその疑いがあるもの
 2−2 急性肝炎
 2−3 慢性肝炎で症状のあるもの又は治療を要するもの
 2−4 肝硬変
 2−5 急性膵炎及び急性膵炎後で仮性膵のう胞を伴うもの
 2−6 慢性膵炎のうち症状のあるもの又は治療を要するもの
 2−7 消化管良性疾患(食道・胃静脈瘤、瘢痕化していない胃・十二指腸潰瘍、寛解期以外の炎症性腸疾患等)
2−8 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 上記2の疾患が疑われる場合には、血液検査、画像検査等により精査すること。
 3−2 慢性肝炎、肝硬変については、静脈瘤や出血傾向等に注意し、急性機能喪失の危険性を考慮すること。
4.評価上の注意
 4−1 胃・十二指腸潰瘍について、内視鏡検査により治癒(S-stage)が確認された場合は、適合とする。予防的にH2ブロッカーを投与する場合は、内視鏡による潰瘍治癒(S-stage)確認後、使用医薬品による副作用がないことが確認された場合には、適合とする。
制酸薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーを除く。)、防御因子増強薬の使用は、病態が航空業務に影響を与えない範囲であり、かつ、使用医薬品の副作用が認められないことが確認された場合には、適合とする。なお、抗コリン剤の使用は不適合である。
 4−2 クローン病又は潰瘍性大腸炎については、医薬品使用がなく臨床的に寛解しており、航空業務に支障を来すおそれがないと認められる場合は、適合とする。
 4−3 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−4 肝硬変について、無症状で静脈瘤等の合併がなく治療を要さない場合で、Child-Pugh分類Aであれば適合とする。
 4−5 生体肝移植の提供者については、術後少なくとも1ヶ月を経て、肝機能が正常化し、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がないものは、適合とする。
5.備 考
 5−1 慢性膵炎の治療中で病態が安定している者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、血液検査、画像検査等の検査結果、臨床経過等を付して申請すること。
 5−2 食道・胃静脈瘤で病態が安定しており、出血の危険性が極めて低いと考えられる者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患についての臨床経過等の記載に加え、内視鏡所見及び経過等を付して申請すること。
 5−3 クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療中で、病状が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、症状や内視鏡所見を含めた原疾患の活動性の評価等を付して申請すること。
 5−4 慢性肝炎・肝硬変の治療中で、病態が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、画像所見、肝予備能、凝固系、血算等の血液検査結果等を付して申請すること。
 5−5 上記5−1から5−4の者のうち、十分な経過観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。[第2種]
 5−6 肝移植を受け、術後十分な観察期間を経て経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患についての記載及び術後の治療内容を含む臨床経過、手術記録、現在の血液及び画像検査等を付して申請すること。

 4−2 消化器外科疾患
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある消化器外科疾患又は手術による後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 胆石症
 2−2 腹部の内・外ヘルニアでヘルニア内容の嵌頓又は絞扼のおこる可能性のあるもの
 2−3 肛門部疾患により、貧血を来す出血、鎮痛を要する疼痛又は炎症を伴うもの
 2−4 外科手術後、次に該当するもの
  (1)手術後観察期間の不十分なもの
    (イ)虫垂切除後又は胆嚢摘出後(腹腔鏡下摘出術を含む)1ヶ月以内のもの
    (ロ)腹部、腰部、骨盤部又は外ヘルニア手術後1ヶ月以内のもの
    (ハ)消化管切除後3ヶ月以内のもの(ただし、腹腔鏡下消化管切除術の場合は、1ヶ月)
  (2)人工肛門(ストーマ)、尿管皮膚瘻・回腸導管(ウロストーマ)の造設してあるもの
  (3)航空業務に支障を来すおそれのある手術による後遺症が認められるもの(術後イレウス、ダンピング症候群等)
3.検査方法及び検査上の注意
 必要に応じて血液検査及び画像検査等により術後の回復状態を確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 胆石症について、無症候性で治療を要さない者又は術後少なくとも1ヶ月を経て経過良好であり、手術による後遺症のない者については、適合とする。
 4−2 開腹手術後は、腹壁運動機能の回復を確認し、後遺症及び運動・食事制限等について十分に検討を行うこと。
 4−3 ヘルニアで、用手還納できる場合又は装具(ヘルニアバンド等)使用により逸脱を防ぐことができる場合は、ヘルニアの部位を確認し、体位の変化によっても嵌頓又は絞扼のおそれがないことが確認されれば適合とする。
 4−4 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
5.備 考
 5−1 胆石症の治療中で経過良好な者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、画像検査、血液検査等を付して申請すること。
 5−2 ストーマ又はウロストーマを造設した者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、種類、位置及び使用パウチ等の状況についての報告を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

5.血液および造血臓器
1.身体検査基準
  (1)航空業務に支障を来すおそれのある貧血がないこと。
  (2)航空業務に支障を来すおそれのある血液又は造血器の系統的疾患がないこと。
  (3)航空業務に支障を来すおそれのある出血傾向を有する疾患がないこと。
2.不適合状態
 2−1 航空業務に支障を来すおそれのある貧血
 2−2 急性白血病
 2−3 骨髄増殖性疾患
 2−4 リンパ増殖性疾患
 2−5 骨髄腫及びその類縁疾患
 2−6 止血異常及び凝固異常
3.検査方法及び検査上の注意
 上記2.の疾患が疑われた場合には、血液検査を行い、検討すること。
4.評価上の注意
 4−1 貧血がある場合は、原疾患について十分に検討を行うこと。
 4−2 貧血について、地上で無症状であっても上空で低圧低酸素にさらされた場合に航空業務に支障を来すおそれがあることを考慮し、男性ではヘモグロビン(Hb)値11g/dl未満又はヘマトクリット(Ht)値33%未満、女性ではHb値9g/dl未満、Ht値27%未満を目安に慎重に判断すること。
 4−3 Ht値の上昇は、血液の粘稠度を上げ脳血流量を低下させるため、その原因について検討を行うこと。
 4−4 原疾患がなく、血小板のみが低値を示す場合には、凝固系に異常がなければ適合とする。
 4−5 骨髄移植の提供者で、術後十分な観察期間を経て、貧血や血小板減少、凝固異常等を認めず、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症のない場合は、適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.の不適合状態であって、治療後寛解した者又は治療中であっても寛解している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容及び現症を含む臨床経過、各種血液検査の結果、骨髄所見及び画像診断結果等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

6.腎臓、泌尿器及び生殖器
 6−1 腎疾患
1.身体検査基準
 腎臓に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 急性腎炎又はネフローゼ症候群
 2−2 腎結石
 2−3 多発性嚢胞腎
 2−4 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
 2−5 手術後1ヶ月以内のもの
 2−6 血液透析、腹膜透析その他の維持血液浄化療法を受けているもの
 2−7 腎移植を受けているもの
 2−8 腎機能障害を呈するもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 必要に応じて尿沈査、血液生化学検査、画像検査等を用いて確認すること。
 3−2 必要に応じて腎機能について確認すること。
 3−3 腎機能障害とは、血清クレアチニン値が2.0mg/dlを超えるものをいう。
4.評価上の注意
 4−1 腎結石については、基礎疾患がなく治療の有無にかかわらず結石が完全に排除されたことが確認された場合又は基礎疾患、疝痛発作若しくは肉眼的血尿の既往歴がなく、発作の可能性が低いと判断される場合は、適合とする。
 4−2 多発性嚢胞腎については、他の臓器についても慎重に検討し、自覚症状(腹痛、腰痛、肉眼的血尿等)、感染、腎機能障害及び他臓器の重大な合併症(脳動脈瘤等)がない場合は、適合とする。
 4−3 一側腎(先天性又は後天性)については、感染又は高血圧等がなく腎機能障害のない場合は、適合とする。
 4−4 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照すること。
5.備 考
 5−1 ネフローゼ症候群の治療中又は治療歴を有する者であって、当該疾患が安定している者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、原疾患及び治療内容の詳細を含む臨床経過、検査結果等を付して申請すること。
 5−2 腎結石について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、尿検査(沈査を含む。)、画像所見、基礎疾患の有無についての報告を含む臨床経過等を付して申請すること。
 5−3 多発性嚢胞腎について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、頭部の画像検査(脳動脈瘤等の評価)、心臓超音波検査、腹部の画像検査(肝のう胞、膵のう胞及び大腸憩室の評価)及び各種腎機能検査の結果等を付して申請すること。
 5−4 上記5−1から5−3の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で合格とすることを許可される。[第2種]
 5−5 腎移植を受けた者で、日常生活に支障がなく、薬剤の副作用、拒絶反応、感染症等がなく腎機能が安定した(血清クレアチニン濃度2.0r/dl以下)と認められる者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、手術記録及びその他の治療内容を含む臨床経過、検査所見等を付して申請すること。

 6−2 泌尿器系疾患
1.身体検査基準
 泌尿器に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 尿管の狭窄又は圧迫
 2−2 尿路結石
 2−3 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
 2−4 泌尿器系の手術後1ヶ月以内のもの(経尿道的電気切除−TURを含む。)
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 必要に応じて、画像検査等により検討するとともに、泌尿器科医の診断により確認すること。
 3−2 尿路結石については、十分に問診すること。
4.評価上の注意
 4−1 尿路結石について、基礎疾患がなく、治療の有無にかかわらず画像検査によって排石が確認された場合には、適合とする。
 4−2 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
5.備 考
 5−1 尿路結石について、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、尿検査(沈査を含む。)、画像所見、基礎疾患の有無及び治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 6−3 生殖器系疾患
1.身体検査基準
 生殖器に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 治療を必要とする炎症
 2−2 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
 2−3 治療を必要とする前立腺肥大症
 2−4 生殖器官の手術後1ヶ月以内のもの(経尿道的電気的切除術−TURを含む。)
 2−5 精神症状若しくは著しい疼痛等を伴う月経障害又は子宮内膜症
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 必要に応じて画像検査等により検討を行うとともに、産婦人科医又は泌尿器科医の診断により確認すること。
 3−2 月経障害の有無については、問診により確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 卵巣腫瘤は捻転をおこすことがあるため、婦人科医の診断により確認すること。
 4−2 子宮筋腫について、貧血を来すような出血等がない場合は、適合とする。
 4−3 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−4 子宮内膜症等で経口避妊薬(低用量ピル)を投薬する場合は、投薬開始後最低1ヶ月間の経過観察期間をおき、その間に血栓傾向、肝障害、血圧異常等の副作用の定期的なチェックを実施し、異常がないことを確認すれば適合とする。
5.備 考

 6−4 妊 娠
1.身体検査基準
 [第1種]
  妊娠していないこと。
 [第2種]
  妊娠により航空業務に支障を来すおそれがないこと。
2.不適合状態
 [第1種]
  妊娠しているもの
 [第2種]
 2−1 正常妊娠でないもの(子宮外妊娠又は前置胎盤等)
 2−2 妊娠の初期(第15週まで)及び妊娠の末期(第28週以降)
 2−3 航空業務に支障を来す妊娠に伴う合併症(悪阻及び中毒症等)又は流産若しくは早産の徴候のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 妊娠の有無については、問診により確認すること。[第2種]
 3−2 妊娠中は、産婦人科医の診断(診察及び超音波検査法等)により母体と胎児の状態について確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 妊娠については、母子の健康及び航空の安全の観点から慎重に対応するとともに、航空業務による母子への影響について十分に説明すること。
 4−2 出産又は流産後の場合には、母体の回復状況について産婦人科医の診断を受け、航空業務に支障のないことを確認すること。
5.備 考

7.運動器系
 7−1 運動器の奇形、変形若しくは欠損又は機能障害
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある運動器の奇形、変形若しくは欠損又は機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 骨又は関節の著しい奇形、変形若しくは欠損又は機能障害により航空業務に支障を来すおそれがあるもの
 2−2 骨、筋肉、腱、神経又は関節の重大な疾患若しくは外傷又はその後遺症により航空業務に支障を来すおそれがあるもの
 2−3 四肢の全部又は部分的欠損により航空業務に支障を来すおそれがあるもの
 2−4 習慣性脱臼
3.検査方法及び検査上の注意
 筋疾患については、筋、神経及び内分泌系における家族歴及び既往歴についても問診し、必要に応じて各種領域の検査を行い、全身性疾患の有無について検討すること。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 何らかの運動器の奇形、変形若しくは欠損又は機能障害を有する者で、航空業務に支障を来すか否かの評価が困難な場合は、国土交通大臣の判断を受けることが必要である。この場合、臨床経過、所見が今後変化する可能性、現在の可動域、筋力等の運動機能についての評価等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、身体所見に変化する可能性がなく(欠損治癒等)、航空業務に支障を来すおそれがないことが確認されたものは、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 7−2 脊柱疾患
1.身体検査基準
 脊柱に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は変形がないこと。
2.不適合状態
 脊柱の骨折、脱臼、脊椎疾患、椎間板疾患及び著しい背腰痛症等により航空業務に支障があるもの
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 何らかの脊柱の疾患又は変形を有する者で、航空業務に支障を来すか否かの評価が困難な場合は、国土交通大臣の判定を受けることが必要である。この場合、臨床経過、所見が今後変化する可能性、現在の運動機能についての評価等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、身体所見に変化する可能性がなく、航空業務に支障を来すおそれがないことが確認されたものは、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

8.精神及び神経系
 診断上の一般注意
 1.精神及び神経系の診断は、全検査基準のうち主として重要な精神面に該当し、既往歴、遺伝歴、生活歴、日常行動についての客観的資料をできるだけ集め、検討されなければならない。特に慎重な検討を要する事例については、これらの客観的資料の把握が不可欠である。
 2.既往歴では、出生時の状況、生後の発育状況、高熱疾患、交通事故、頭部外傷、ひきつけや失神発作及び不眠等に特に注意する。
 3.遺伝歴では、近親者における自殺、問題行動、精神病、神経症、てんかん、片頭痛及び神経疾患等の有無に注意する。
 4.本人との面接においては、表情、態度及び言動を注意深く観察する。
 5.性格傾向としては、過敏傾向、強迫傾向、自己顕示傾向、気分易変、爆発傾向、意志薄弱及び無力傾向の判定のほか、家族、学校及び社会における適応性についての客観的資料に特に注意する。
 6.面接の際の参考資料として、必要に応じて各種の心理テストを利用する。
 7.脳の器質性障害若しくは機能性障害又はそれらの疑いがある場合は、必要に応じて神経学的検査、脳波、画像検査等の検査又は各種の心理テストを実施する。
 8.不適合状態の疾患名に付した括弧内の番号は、国際疾病分類(International Classification of Diseases 10th Edition,ICD1O)の分類番号であり、各疾患の診断基準は同分類の手引きに準拠する。なお、診断カテゴリーのリストは本マニュアルの付録2として収録してある。
 9.脳波検査は、初回の航空身体検査時、航空事故又は他の事故等により頭部に衝撃を受けた後の最初の航空身体検査時及びその他診断上必要と認められた場合に実施する(脳波計は、JIS規格のものを使用する。)。なお、初回の脳波記録は、以後比較参照の必要が生じることもあるため保存されることが望ましい。単極及び双極誘導による安静記録並びに過呼吸負荷、光刺激及び睡眠記録を行うこと。なお、詳細については本マニュアルの付録1−1として収録してある。

 8−1 精神病及び神経症等
1.身体検査基準
 重大な精神障害又はこれらの既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 症状性を含む器質性精神障害(F0)又はその既往歴のあるもの
 2−2 統合失調症、統合失調型障害及び妄想性障害(F2)又はその既往歴のあるもの
 2−3 気分(感情)障害(F3)又はその既往歴のあるもの
 2−4 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害(F4)又はその既往歴のあるもの
 2−5 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(F5)又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 「診察上の一般注意」参照のこと
4.評価上の注意
 上記2−1から2−5に掲げる障害の既往歴のある場合又はその疑いがある場合は、現在における治癒の状態及び再発の可能性について、慎重に検討を行うこと。
5.備 考
 5−1 上記2−3、2−4及び2−5の疾患について、身体所見及び精神所見が回復したと判断された者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療経過及び現症を含む臨床経過、心理テストの結果等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て、航空業務に支障を来すおそれがある状態に進行しないと認められるものは、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 8−2 パーソナリティ(人格)障害及び行動障害
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのあるパーソナリティ障害若しくは行動障害又はこれらの既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 成人のパーソナリティ(人格)及び行動の障害(F6)又はその既往歴のあるもの
 2−2 小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F9)又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 「診断上の一般注意」参照のこと。
 3−2 自殺未遂、自傷行為、家出、放浪、非行又は犯罪行為等の問題行動があった場合は、その動機や発生状況について慎重に検討を行うこと。
4.評価上の注意
 上記3−2の問題行動があった場合であって、将来類似の行動を生ずるおそれのあるときは、不適合とする。
5.備 考

 8−3 薬物依存及びアルコール依存
1.身体検査基準
 薬物依存若しくはアルコール依存又はこれらの既往歴がないこと。
2.不適合状態
 精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1)又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
5.備 考

 8−4 てんかん
1.身体検査基準
 てんかん又はその既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 てんかん(全般発作又は部分発作)又はその既往歴のあるもの
 2−2 脳波記録上、棘(spike)、棘徐波、明らかな局在性徐波又は高度の基礎律動異常を呈するもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 問診により、てんかんの既往歴の有無や、過去に2−2の脳波異常を指摘されたことの有無について確認すること。
 3−2 必要に応じて、脳波検査、画像検査、神経学的検査等を行うとともに、精神神経科医又は神経内科医の診断により確認すること。
4.評価上の注意
 上記2−2の棘(spike)について、14Hz又は6Hzの陽性棘は、適合とする。
5.備 考

 8−5 意識障害等
1.身体検査基準
 意識障害若しくはけいれん発作又はこれらの既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 意識障害又はその既往歴のあるもの
 2−2 けいれん発作又はその既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 問診により、意識障害及びけいれん発作の既往歴について確認すること。
 3−2 必要に応じて、脳波検査、画像検査、神経学的検査、自律神経系検査、循環器系検査等を検討するとともに、精神神経科医、神経内科医又は循環器の専門医の診断により確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 小児期において、一過性のひきつけ又は意識消失発作等の既往歴がある場合は、慎重に判断すること。
 4−2 5歳未満の熱性けいれんの既往歴がある場合は、その後のけいれん発作について詳細に確認すること。5歳未満における発作発生後、現在に至るまで発作が認められず、脳波に異常所見が認められない場合は、適合とする。
 4−3 外傷後の意識障害のうち、意識障害の持続時間が5分以内であり、3ヶ月の観察期間を経て、高次機能に異常を認めず、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症のないものは適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.の既往歴がある者で、経過良好な者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合、原疾患についての記載及び現症を含む臨床経過、脳波検査、必要であれば画像検査等を付して申請すること。
 5−2 外傷後又は術後で、抗けいれん薬の内服の既往がある者が、服薬中止後2年以上の観察期間を経て、経過良好であり国土交通大臣の判定を受けようとする場合、外傷又は手術についての詳細な記録及び治療内容を含む臨床経過、脳波検査、画像検査等を付して申請すること。
 5−3 上記5−1及び5−2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 8−6 頭部外傷
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある頭部外傷の既往歴又は頭部外傷後遺症がないこと。
2.不適合状態
 2−1 画像上の脳挫傷(頭蓋内出血を含む。)又は頭蓋骨折の既往歴のあるもの
 2−2 後遺症として、外傷後てんかん、脳神経障害、運動障害、知能障害、記憶障害、又はパーソナリティ(人格)障害が認められるもの
 2−3 外傷に伴う意識障害の既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 受傷時と治療に関する医療記録について慎重に検討を行うこと。
 3−2 後遺症については、必要に応じて脳神経外科医、神経内科医又は精神神経科医の診断により確認すること。
 3−3 頭部外傷後の意識障害については、8.精神及び神経科8−5意識障害等を参照のこと。
4.評価上の注意
 頭蓋骨折の既往歴のうち、脳挫傷を伴わず、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症のないものは、適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.について、経過良好である者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、神経学的所見、画像検査、脳波検査等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な経過観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。
 5−3 頭部外傷後で抗けいれん薬を内服した既往歴のある場合については、8.精神及び神経系8−5意識障害等を参照すること。

 8−7 中枢神経系統の障害
1.身体検査基準
 中枢神経の重大な障害又はこれらの既往歴がないこと。
2.不適合状態
 2−1 脳炎、髄膜炎等の炎症性疾患又はこれらの既往歴のあるもの
 2−2 脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、脳動脈瘤等の脳・脊髄血管障害又はこれらの既往歴のあるもの
 2−3 代謝・中毒性疾患又はこれらの既往歴のあるもの
 2−4 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるもの
 2−5 変性疾患又はその既往歴のあるもの
 2−6 脱随疾患又はその既往歴のあるもの
 2−7 中枢神経系の手術歴のあるもの
 2−8 航空業務に支障を来すおそれのある片頭痛又は慢性頭痛
 2−9 プリオン病
3.検査方法及び検査上の注意
 上記2.の不適合状態が疑われる場合は、注意深く診察し、必要であれば画像検査等を行って十分に検討を行うこと。
4.評価上の注意
 4−1 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−2 髄膜炎の既往歴のあるもので、経過中に意識障害や麻痺等、脳実質障害の症状がなく、脳波所見に異常がなく神経症状等の後遺症がないことが確認された場合は、適合とする。
 4−3 下垂体部腫瘍については、1.一般1−5内分泌及び代謝疾患も参照のこと。
5.備 考
 5−1 脳炎及び髄膜炎等の炎症性疾患の既往歴があり、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、頭部の画像検査結果、脳波及びその所見、現在の神経学的所見を含む臨床経過の詳細等を付して申請すること。
 5−2 脳梗塞又は一過性脳虚血発作の既往歴があり、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がなく、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、頭部MRI等の画像検査、脳波及びその所見、現在の神経学的所見及び治療内容を含む臨床経過、心血管系の評価、危険因子(喫煙、高脂血症、肥満、高血圧、糖尿病等)についての検討等を付して申請すること。無症候性脳梗塞、無症候性脳動脈硬化症についてもこれに準じる。また、無症候性脳梗塞の診断は、無症候性脳血管障害の診断基準(付録1−3)を参照のこと。
 5−3 脳出血やクモ膜下出血等頭蓋内出血の既往があり、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がなく、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、画像検査結果、脳波及びその所見、原因、現在の神経学的所見及び治療内容を含む臨床経過、危険因子についての検討等を付して申請すること。
 5−4 中枢神経系の手術後、航空業務に支障を来すおそれのある後遺症がなく、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、原疾患についての記載、現在の神経学的所見及び治療内容を含む臨床経過、手術録、術前及び術後の画像検査、脳波及びその所見等を付して申請すること。血管内治療及びガンマナイフ等による治療後もこれに準じる。
 5−5 未破裂動脈瘤で、破裂の危険性が極めて低く治療の必要がなく、神経学的所見に異常を認めない者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、頭部の画像検査結果(動脈瘤の径及び部位の評価)、脳波及びその所見、現在の神経学的所見及び血圧の推移を含む臨床経過の詳細、治療についての脳神経外科医の見解等を付して申請すること。
 5−6 頭痛の治療中で経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、脳波及びその所見、画像検査結果、治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。
 5−7 上記5−1から5−6の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 8−8 末梢神経系統及び自律神経系統の障害
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある末梢神経又は自律神経の障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 航空業務に支障を来すおそれのある末梢神経障害
 2−2 航空業務に支障を来すおそれのある自律神経障害
 2−3 航空業務に支障を来すおそれのある発作性又は再発性の神経筋疾患
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 上記2.について、その症状が軽く、航空業務に支障を来すおそれがないと認められる場合は、適合とする。
5.備 考

9.眼
 9−1 外眼部及び眼球附属器
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある外眼部及び眼球付属器の疾患又は機能不全がないこと。
2.不適合状態
 2−1 航空業務に支障を来すおそれのある眼瞼、結膜、涙器、眼窩及び角膜疾患又は機能不全
 2−2 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
 2−3 屈折矯正手術の既往歴のあるもの
 2−4 オルソケラトロジー(コンタクトレンズによる屈折矯正術)による矯正
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 検査に当たっては、自覚症状、既往歴等について十分に問診すること。
 3−2 初回の航空身体検査は、細隙灯顕微鏡を用いて検討を行うこと。初回以降は、必要に応じて細隙灯顕微鏡を実施すること。
4.評価上の注意
 4−1 円錐角膜について、眼鏡で十分な視機能が得られる場合は、適合とする。
 4−2 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるものについては、1.一般1−3.腫瘍の項を参照すること。
5.備 考
 5−1 屈折矯正手術の既往歴があり、屈折矯正手術後6ヶ月以上を経過し症状が安定し、視機能が基準を満たしている者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、手術記録を含む臨床経過のほか、以下の検査結果を付して申請すること。
  (1)視力の日内変動(同日3回以上の測定結果)
  (2)コントラスト感度
  (3)グレアテスト
  (4)角膜形状解析
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、症状が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 9−2 緑内障
1.身体検査基準
 緑内障がないこと。
2.不適合状態
 2−1 閉塞隅角緑内障
 2−2 開放隅角緑内障
 2−3 正常眼圧緑内障
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 眼圧の測定は、初回の航空身体検査時、40歳に達した後の最初の航空身体検査時、その後は前回の検査から1年に1回の間隔で実施すること。ただし、眼圧の上昇を認めるもの、緑内障の疑いのあるもの等、必要に応じて上記以外の検査時にも眼圧測定を実施すること。
 3−2 眼圧の測定は、アプラネーション・トノメーター(圧平眼圧計)又はノンコンタクト型眼圧計を用いること。
 3−3 眼圧22mmHg以上については、慎重に検討を行うこと。
4.評価上の注意
 4−1 自覚症状、眼圧、視神経乳頭及び視野所見について、緑内障を疑う場合は、眼科医の診断により確認すること。高眼圧症のみで、緑内障と診断されない場合は、適合とする。
 4−2 ぶどう膜炎、水晶体疾患又は眼外傷等の既往歴のある場合には、眼圧の上昇が認められることがあるため、注意すること。
 4−3 閉塞隅角緑内障の発作の危険性が疑われる場合は、十分に検討を行うこと。
5.備 考
 5−1 緑内障の治療中の者又は緑内障の治療歴のある者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過(眼圧、視野検査を含む。)等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 9−3 中間透光体、眼底及び視路
1.身体検査基準
 中間透光体、眼底又は視路に航空業務に支障を来すおそれのある障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 水晶体疾患(白内障を含む。)
 2−2 ぶどう膜炎(虹彩炎及び毛様体炎を含む。)
 2−3 網脈絡膜疾患
 2−4 糖尿病網膜症
 2−5 視神経疾患
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 検査に当たっては、自覚症状について問診すること。
 3−2 中間透光体の検査については、初回の航空身体検査は、細隙灯顕微鏡を用いて検討を行うこと。初回以降は、必要に応じて、細隙灯顕微鏡検査を実施すること。
 3−3 眼底検査は、直像検眼鏡又は倒像検眼鏡等によること。
4.評価上の注意
 4−1 白内障について、視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
 4−2 術後後発白内障に対して、レーザー等による治療を行った場合で、視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
 4−3 ぶどう膜炎の既往歴がある場合は、再発に注意するとともに眼圧に異常のないことを確認すること。治療の必要がなく、視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
 4−4 眼底検査は、網膜所見(出血、白斑等)及び視神経乳頭について慎重に検査すること。
 4−5 網膜剥離については、治療により所見が安定し、視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
 4−6 網膜絡膜疾患については、治療の必要がなく、視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
 4−7 糖尿病網膜症については、単純網膜症で視機能が基準を満たす場合は、適合とする。
5.備 考
 5−1 白内障術後の者であって眼内レンズ(人工水晶体)又はコンタクトレンズにより視機能が基準を満たし、手術後3ヶ月以上の観察期間を経て経過良好であると認められる者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過の所見、手術記録やその他の治療内容を含む臨床経過、両眼視機能検査等の検査結果を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

10.視機能
 10−1 遠見視力
1.身体検査基準
 [第1種]
 次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
  イ.各眼が裸眼で0.7以上及び両眼で1.0以上の遠見視力を有すること。   ロ.各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上、かつ、両眼で1.0以上に矯正することができること。
 [第2種]
 次のイ又はロに該当すること。ただし、ロの基準については、航空業務を行うに当たり、常用眼鏡(航空業務を行うに当たり常用する矯正眼鏡をいう。)を使用し、かつ、予備の眼鏡を携帯することを航空身体検査証明に付す条件とする者に限る。
  イ.各眼が裸眼で0.7以上の遠見視力を有すること。
  ロ.各眼について、各レンズの屈折度が(±)8ジオプトリーを超えない範囲の常用眼鏡により0.7以上に矯正することができること。
2.不適合状態
 2−1 上記基準を満たさないもの
 2−2 オルソケラトロジー(特殊なコンタクトレンズを使用した屈折矯正術)による矯正
 2−3 屈折矯正手術の既往歴のあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 視力表輝度は、80〜300cd/uとすること。
 3−2 室内照度は、50ルックス以上とすること。ただし、回転式単独視標等で光源を用いる検査機器を使用する場合は、室内照度が視力表輝度を上回らないようにすること。
 3−3 測定距離は、5メートルとすること。
 3−4 視標はランドルト環を用いること。回転式で単独視標のものがよい。
 3−5 視力判定基準は、5個以上の指標に対してその正答率が60%以上であることとする。
 3−6 常用眼鏡としてコンタクトレンズを使用してもよいが、コンタクトレンズを使用する者に対しては、コンタクトレンズを使用した状態で遠見視力基準に適合することを確認すること。なお、初めてコンタクトレンズを使用する場合は、1ヶ月以上の順応期間をおくこと。
 3−7 常用眼鏡のレンズの屈折度は、等価球面度数により算出すること。コンタクトレンズを使用する者については、予備眼鏡で屈折度を算出してもよい。
4.評価上の注意
 オルソケラトロジー又は屈折矯正手術の既往歴のある者については、9.眼、9−1外眼部及び眼球附属器を参照のこと。
5.備 考
 常用眼鏡を必要とする場合、常用眼鏡を使用した状態で中距離視力基準及び近見視力基準に適合するものでなくてはならない。コンタクトレンズを使用する場合も、同様とする。ただし、多重焦点型のコンタクトレンズを使用してはならない。また、色つきのコンタクトレンズを使用してはならない。

 10−2 中距離視力
1.身体検査基準
 [第1種]
 裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が80cmの視距離で、近見視力表(30cm視力用)により0.2以上の視標を判読できること。
2.不適合状態
3.検査方法及び検査上の注意
 [第1種]
 3−1 検査条件は遠見視力の場合に準じる。
 3−2 視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%以上であることとする。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 常用眼鏡を使用しない者で、中距離視力基準について矯正眼鏡を必要とする者については、矯正眼鏡及びその予備眼鏡を携帯することを航空身体検査証明書に付す条件とすること。
 5−2 矯正眼鏡を必要とする場合、矯正眼鏡を使用した状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。なお、矯正眼鏡はルックオーバー型、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ又は累進屈折力レンズ等とする。跳ね上げ式眼鏡も使用してよいが、矯正眼鏡を跳ね上げた状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。

 10−3 近見視力
1.身体検査基準
 裸眼又は自己の矯正眼鏡の使用により各眼が30cmから50cmまでの間の任意の視距離で近見視力表(30cm視力用)の0.5以上の視標を判読できること。
2.不適合状態
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 検査条件は遠見視力の場合に準じる。
 3−2 視力判定基準は、5個以上の視標に対してその正答率が60%以上であることとする。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 常用眼鏡を使用しない者で、近見視力基準について矯正眼鏡を必要とする者については、矯正眼鏡及びその予備眼鏡を携帯することを航空身体検査証明書に付す条件とすること。
 5−2 矯正眼鏡を必要とする場合、矯正眼鏡を使用した状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。なお、矯正眼鏡はルックオーバー型、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ又は累進屈折力レンズ等とする。跳ね上げ式眼鏡も使用してよいが、矯正眼鏡を跳ね上げた状態で遠見視力基準に適合するものでなければならない。

 10−4 両眼視機能
1.身体検査基準
 [第1種]
 航空業務に支障を来すおそれのある両眼視機能の異常がないこと。
2.不適合状態
 2−1 斜視
 [第1種]
 2−2 不同視を呈するもの
 2−3 輻湊・開散運動に異常が認められるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 眼位検査はプリズムを用いた交代遮蔽検査法によること。なお、マドックス杆検査法又はこれに準じる検査法を用いてもよい。
第2種については、初回の航空身体検査時に行うこと。
 [第1種]
 3−2 左右眼の屈折度に2ジオプトリー以上の差異があるものを、不同視とすること。
 3−3 輻湊検査は視標が2つに見える点又は両眼視線の開散する点を取ってもよい。簡便な方法として、ペンライト等を被検者の鼻根部に接近させ、それが2つに見える点、又は開散する点をもって輻湊近点とする。その点と外眼角との距離を計測し100mm以下を正常とする。
4.評価上の注意
 4−1 上記2.の不適合状態の疑いがある場合は、眼科医の診断により確認すること。
 4−2 不同視を呈するものについて、深視力が正常である場合は、適合とする。深視力検査の正常範囲は、次のとおりとする。
  二杆法の場合は、5回平均値が30mm以内のもの
  三杆法の場合は、5回平均値が20mm以内のもの
5.備 考
 [第1種]
 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、視力、屈折度、眼位、輻湊近点、両眼視機能検査(プリズムテスト、大型弱視鏡、深視力等)の成績を付して申請すること。

 10−5 視 野
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある視野の異常がないこと。
2.不適合状態
 2−1 視野検査最大イソプタ(V/4)において、正常視野から半径方向に15°以上の狭窄を認めるもの
 2−2 視野検査T/4において、暗点を示すもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 検査方法は、動的量的視野計(ゴールドマン視野計)により、V/4及びT/4のイソプタについて、少なくとも15°毎に測定を行うこと。
 3−2 正常視野は、最大イソプタが次に示す範囲以上とする。
  上方60°、外上方75°、外方95°、外下方80°、下方70°、内下方60°、内方60°及び内上方60°
 3−3 ゴールドマン視野計が利用できない場合には、周辺視野を確認することができる自動視野計等の量的視野計を用いること。その結果、感度低下所見が疑われる場合は、5.備考に従って、国土交通大臣の判定を受けること。
4.評価上の注意
 視野異常が疑われる場合には、眼科医の診断を受けること。
5.備 考
 5−1 上記2.の不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合、視野検査(少なくとも5本のイソプタで測定すること。)結果、過去2年分の視野検査結果、眼圧、眼底所見、自覚症状、臨床所見等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 10−6 眼球運動
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある眼球運動の異常がないこと。
2.不適合状態
 2−1 複視
 2−2 病的眼振
 2−3 その他眼球運動に異常のあるもの。
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 眼球運動検査は、視診により8方向(内、外、上、下、斜上内、斜上外、斜下内、斜下外)について行うこと。
 3−2 上記検査法で異常が認められた場合は、下記の検査のいずれかを実施すること。
  (1)複像検査
  (2)注視野検査
4.評価上の注意
 4−1 3−2の結果複視が認められず、かつ、視認可能範囲について、各方向(8方向)が45°以上ある場合は、適合とする。
 4−2 眼振が疑われる場合は、11.耳鼻咽喉11−2平衡機能を参照すること。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、視機能検査結果及び複像検査等の成績(ヘスチャート等)を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 10−7 色 覚
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある色覚の異常がないこと。
2.不適合状態
 石原色覚検査表で正常範囲と認められないもの
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 色覚検査は、石原色覚検査表(学校用色覚異常検査表を除く。)を用い、原則として初回の航空身体検査時に行うこと。
 3−2 色覚検査表は、変色又は褪色していないものを用いること。
 3−3 検査時の照明は、自然光又はそれに準じた人工光線を用いること。
 3−4 後天色覚異常の有無に注意すること。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、パネルD−15検査結果を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、航空業務に支障を来すおそれがなく、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

11.耳鼻咽喉
 11−1 内耳、中耳及び外耳
1.身体検査基準
 内耳、中耳(乳様突起を含む。)又は外耳に航空業務に支障を来すおそれのある疾患がないこと。
2.不適合状態
 2−1 内耳、中耳及び外耳
  (1)真珠腫性中耳炎
  (2)メニエール病
  (3)突発性難聴
  (4)外リンパ瘻(内耳窓破裂)
  (5)良性発作性頭位めまい症
  (6)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
  (7)航空業務に支障を来すおそれのある炎症性疾患
 2−2 その他
  (1)聴神経腫瘍及びその他の小脳橋角部腫瘍
  (2)前庭神経炎
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 内耳及び中耳の疾患については、眩暈を生じる場合があるので既往歴等について慎重に確認すること。
 3−2 必要に応じて耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
 3−3 メニエール病、良性発作性頭位めまい症及び前庭神経炎については、11.耳鼻咽喉11−2平衡機能障害も参照のこと。
4.評価上の注意
 4−1 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いがある者については、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−2 突発性難聴については、平衡機能に異常がなく聴力基準を満たす時は、適合とする。
 4−3 良性発作性頭位めまい症については、単回の発作で自覚症状が消失し、眼振検査、平衡機能検査で異常を認めないことが確認されれば、適合とする。
 [第1種]
 4−4 上記2−1の疾患が臨床的に治癒している場合であっても、あぶみ骨手術の既往があるときは不適合とする。
 ただし、その手術法が小開窓あぶみ骨切除手術(Small Fenestra Stapedectomy)であり、手術後6ヶ月以上を経過し平衡機能に異常がなく聴力基準を満たすときは、適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者で、経過良好である者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、聴力検査、平衡機能検査の結果等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 11−2 平衡機能
1.身体検査基準
 平衡機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 めまい症及びその既往歴のあるもの
 2−2 内耳及び中枢に起因する平衡機能障害及びその既往歴のあるもの
 2−3 動揺病
 2−4 病的眼振
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 眼振検査は、視診により正中と4方向(右、左、上、下)について行うこと。
 3−2 自発眼振及び頭位眼振検査
  3−1の視診において眼振が疑われた場合に行う。
 [実施方法]自発・注視眼振検査及びフレンツェル眼鏡下で頭位眼振検査を行う。
 [判定基準]眼振が認められる場合は、不適合とする。
 3−3 平衡機能障害が疑われる場合には、付録1−2に掲げる検査のうちから必要に応じて行い、評価すること。
 3−4 動揺病は、平衡機能障害のあるもの及び心理的影響によっても生ずる「空酔い」の重大なものを指しており、注意深く問診すること。
4.評価上の注意
 4−1 不適合状態が疑われる場合には、耳鼻咽喉科医による精査を実施すること。
 4−2 めまい症の既往歴のあるもの又は内耳及び中枢に起因する平衡機能障害の既往歴のあるもののうち、単回の発作で基礎疾患がなく、症状が消失して眼振検査及び平衡機能検査で異常を認めないことが確認されれば、適合とする。
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、眼振検査(フレンツェル眼鏡使用又は赤外線CCDカメラ下)、偏寄検査、電気眼振計による検査(ENG)結果等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 11−3 鼓 膜
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある鼓膜の異常がないこと。
2.不適合状態
 2−1 耳漏、鼓膜発赤、耳痛等の活動性病変のあるもの
 2−2 瘻孔症状のあるもの、すなわち圧変化によりめまいが起きるおそれのあるもの
3.検査方法及ぴ検査上の注意
 3−1 鼓膜所見は、耳鏡により確認すること。
 3−2 瘻孔症状は、外耳道を指で閉鎖し、圧をかけたときのめまい感や眼振の有無により確認すること。必要に応じて耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
4.評価上の注意
 鼓膜に穿孔が認められた場合又は中耳換気チューブを留置している場合であって、基準値を超える聴力低下がなく、かつ、2.に記載された症状がないときは適合とする。
5.備 考

 11−4 耳 管
1.身体検査基準
 耳管機能障害がないこと。
2.不適合状態
 2−1 耳管狭窄症
 2−2 耳管開放症
3.検査方法及び検査上の注意
 圧変化による耳痛及び耳閉感、自声音響、呼吸音の自覚等の耳管機能障害が疑われる症状がある場合は、耳鼻咽喉科医の診断により確認すること。
4.評価上の注意
5.備 考
 5−1 上記2.不適合状態の者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合には、ティンパノメトリー等の検査結果を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

 11−5 鼻腔、副鼻腔及び咽喉頭
1.身体検査基準
 鼻腔、副鼻腔又は咽喉頭に航空業務に支障を来すおそれのある疾患がないこと。
2.不適合状態
 2−1 鼻腔、副鼻腔
  (1)高度な鼻閉を伴うアレルギー性鼻炎
  (2)進行性鼻壊疽
  (3)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
  (4)航空業務に支障を来すおそれのある炎症性疾患
 2−2 咽喉頭
  (1)軟口蓋麻痺
  (2)咽頭外傷で後遺症のあるもの
  (3)喉頭狭窄
  (4)声帯麻痺
  (5)腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるもの
3.検査方法及び検査上の注意
 鼻腔及び副鼻腔所見にて疾患の有無が疑わしい場合は、画像検査等を実施して診断を確認すること。
4.評価上の注意
 4−1 アレルギー性鼻炎については、1.一般1−7アレルギー疾患を参照のこと。
 4−2 上記2−2(1)から(4)について、重度の言語障害又は構音障害がなく、音声コミュニケーションが可能であり、航空業務に支障を来すおそれのないものは、適合とする。
 4−3 腫瘍又はその既往歴若しくは疑いのあるものについては、1.一般1−3腫瘍を参照のこと。
 4−4 必要に応じて、1.一般1−6リウマチ疾患、膠原病又は免疫不全症、5.血液及び造血器系を参照のこと。
5.備 考

 11−6 鼻中隔
1.身体検査基準
 鼻腔の通気を著しく妨げる鼻中隔の彎曲がないこと。
2.不適合状態
 高度の鼻中隔彎曲
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 鼻鏡所見で鼻腔通気を著しく妨げる鼻腔形態異常が認められるものは、不適合とする。
5.備 考

 11−7 吃、発声障害及び言語障害
1.身体検査基準
 吃、発声障害又は言語障害がないこと。
2.不適合状態
 吃、発声障害又は言語障害
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
 発声障害又は構音障害により音声に異常を来し、音声によるコミュニケーションの困難な場合は不適合とする。
5.備 考

12.聴 力
1.身体検査基準
 [第1種]
 暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、各耳について500、1,000及び2,000Hzの各周波数において35dBを超える聴力低下並びに3,000Hzの周波数において50dBを超える聴力低下がないこと。
 [第2種]
  (1)計器飛行証明を有する者にあっては、暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、各耳について500、1,000及び2,000Hzの各周波数において35dBを超える聴力低下並びに3,000Hzの周波数において50dBを超える聴力低下がないこと。
  (2)(1)に掲げる者以外の者にあっては、次のいずれかに該当すること。
   イ.暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、各耳について500、1,000及び2,000Hzの各周波数において45dBを超える聴力低下がないこと。これを満たさない場合は、暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、いずれか一方の耳について500、1,000及び2,000Hzの各周波数において30dBを超える聴力低下がないこと。
   ロ.暗騒音が50dB(A)未満の部屋で、後方2mの距離から発せられた通常の強さの会話の音声を両耳を使用して正しく聴取できること。
2.不適合状態
3.検査方法及び検査上の注意
 3−1 聴力レベルを測定するオージオメーターはJIST1201-1:2000又はこれと同等の基準によって校正されたものを用いること。
 3−2 検査室内の暗騒音の測定は、指示騒音計の指示計器の動特性を緩(slow)として行う。
 [第2種]
 3−3 検査用語音としては、日本聴覚医学会が作成した57式語表又は67式語表等を使用することが望ましい。航空関係の用語を検査用語音として用いてはならない。
4.評価上の注意
 聴力に大きな変動が認められた場合は、再度検査を実施し、慎重に判断すること。
5.備 考
 5−1 上記1.の基準値を超えた聴力低下を認められた者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、オージオグラム(過去2年分の検査結果があれば、これを付すこと。)及び必要に応じて語音聴力検査成績等を付して申請すること。
 5−2 上記5−1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、聴力低下が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

13.口腔及び歯牙
1.身体検査基準
 口腔及び歯牙に航空業務に支障を来すおそれのある疾患又は機能障害がないこと。
2.不適合状態
 歯牙、上顎骨、下顎骨又は口腔周辺軟部組織の疾患等により、疼痛を伴うもの又は航空業務により疼痛の生じるおそれのあるもの。
3.検査方法及び検査上の注意
 必要に応じてエックス線検査により診断すること。未治療のう歯(虫歯)、歯根のう胞、根尖膿瘍及び歯髄炎等は航空業務(気圧の変化)により新たな歯痛を発生させることがあるため、すみやかに治療を受けさせること。
4.評価上の注意
5.備 考

14.総 合
1.身体検査基準
 航空業務に支障を来すおそれのある心身の欠陥がないこと。
2.不適合状態
3.検査方法及び検査上の注意
4.評価上の注意
5.備 考


付録1-1 脳波測定方法
脳波測定基準
 脳波計 : 18チャンネル脳波計(14チャンネルでも可)
 電極配置 : 10−20法(下記のモンタージュ参照)
 TC : 0.3(ただし、発汗などにより基線の動揺が著しい場合は0.1とし、その旨を明記する。)
 HF : 120(緊張などによりEMGの多い場合は60とし、その旨を明記する。)
 キャリブレーション : 5mm/50μV
 紙送り速度 : 3cm/sec
  (1)安静、開閉眼から睡眠(Stage 2)まで
  (2)光刺激(3〜4分)
    3,6,8,10,12,15,18,20,21,24,30 f/s
  (3)過呼吸(4分、過呼吸後、最低3分記録)
    1分間20〜25回の深い換気を行わせること。

18チャンネル脳波計(脳波16ch)


14チャンネル脳波計(脳波12ch)のときは、( )は省略

 モンタージュ例(必ずしもこのとおりでなくとも良い)
 MP:単極導出,同側耳朶(A1,A2)を基準電極とする
 MP(AV):平均電位基準電極(AV)を基準電極とする
 BP:双極導出

  MP MP(AV) BP MP MP(AV) BP
1 FP1−A1 FP1−AV FP1−F7 FP1−A1 FP1−AV FP1−F7
2 FP2−A2 FP2−AV FP2−F8 FP2−A2 FP2−AV FP2−F8
3 F3−A1 F3−AV F7−T3 F7−A1 F7−AV F7−T3
4 F4−A2 F4−AV F8−T4 F8−A2 F8−AV F8−T4
5 F7−A1 F7−AV T3−T5 T3−A1 T3−AV T3−O1
6 F8−A2 F8−AV T4−T6 T4−A2 T4−AV T4−O2
7 T3−A1 T3−AV T5−O1 C3−A1 C3−AV O1−P3
8 T4−A2 T4−AV T6−O2 C4−A2 C4−AV O2−P4
9 T5−A1 T5−AV O1−P3 P3−A1 P3−AV P3−C3
10 T6−A2 T6−AV O2−P4 P4−A2 P4−AV P4−C4
11 C3−A1 C3−AV P3−C3 O1−A1 O1−AV C3−FP1
12 C4−A2 C4−AV P4−C4 O2−A2 O2−AV C4−FP2
13 P3−A1 P3−AV C3−F3 EOG EOG EOG
14 P4−A2 P4−AV C4−F4 ECG ECG ECG
15 O1−A1 O1−AV F3−FP1      
16 O2−A2 O2−AV F4−FP2      
17 EOG EOG EOG      
18 ECG ECG ECG      


付録1-2 平衡機能検査
1.歩行検査
  [実施方法] 閉眼して6mの距離を前進させ、真すぐに歩行した場合に到着すべき点と、実際に到着した点との左右への偏りを測定する。
  [判定基準] 前進で1m以上左右への偏倚がある場合は、不適合とする。

2.足踏検査
  [実施方法] 半径0.5m及び1mの2個の同心円の中心に両足を揃え起立させ、遮眼のうえ両上肢を前方に伸ばし、50歩の足踏みをさせる。
足踏み中の動揺の有無、終了時の回転角度及び移行距離を測定する。
  [判定基準] 90゜以上の回転角度、1m以上の移行距離又は著しい動揺が認められる場合は、不適合とする。

3.起立検査
 (1)両脚直立検査
  [実施方法] 開眼及び閉眼で被検者の両足先を合わせた状態で直立させ、30秒間身体の平衡状態を観察する。
  [判定基準] 開眼時及び閉眼時ともに身体の動揺の少ないこと。
 (2)単脚直立検査
  [実施方法] 開眼及び閉眼で、片脚の「もも」を前方にほぼ水平位まであげ、単脚で直立させる。30秒間の身体の平衡状態を左右の下肢について観察する。
  [判定基準] 開眼時に動揺や接床を示す場合又は閉眼時中等度以上の動揺若しくは30秒間に3回以上の接床を示す場合は、不適合とする。
 (3)マンテスト(MannTest)
  [実施方法] 両脚を前後に(矢状面上に)一直線上におき、1側の脚の足先を他側の脚の踵に接して起立させ、両脚を伸ばし、正頭位で正面視させる。この姿勢でまず開眼で検査し、次いで遮眼して30秒間観察する。なお、前後の足を交替して同様の観察を行う。
  [判定基準] 開眼時及び閉眼時ともに著明な動揺又は転倒のないこと。

4.遮眼書字検査
  [実施方法] 頭、躯を正面に向け、正しい姿勢で椅子にかけさせ(躯のいかなる部分もよりかかったり、触れさせてはならない。)、鉛筆を持たせ、まず、開眼のまま文字(自分の氏名がよい。)を3cmないし5cm平方の大きさで縦書きさせる。次に、遮眼し、開眼時と同じ文字を書かせる。
  [判定基準] 左右10゜以上の偏書が毎回認められる場合又は各文字に著しい不均整が認められる場合は不適合とする。



付録1-3 無症候性脳血管障害の画像診断基準
「無症候性脳血管障害」とは、次の条件を満たすものをいう。
  (1)血管性の脳実質病巣による神経症候(腱反射の左右差、脳血管性痴呆を含む)がないこと。
  (2)一過性脳虚血発作を含む脳卒中がないこと。
  (3)画像診断上(CT、MRIなど)で血管性の脳実質病変(梗塞巣、出血巣など)の存在が確認されること。

1.脳梗塞
 [MRI]
  (1)梗塞巣は原則として径が3mmを超える不整形不均質の病変でT2強調画像で高信号域で、T1強調画像で低信号域のものとする。
  (2)のう胞化した梗塞巣では、プロトン密度強調画像、FLAIR法で病変中心部が低信号(髄液と同等)で、周囲に高信号域を伴うことがある。
  (3)血管周囲腔の拡大の場合は、一般にT2強調画像が整形で均質な高信号域であり、穿通枝動脈、髄質動静脈の走行に沿い、大脳基底核の下1/3にしばしばみられ、左右対称性のことが多い。径が3mmを超えることは少ない。プロトン密度強調像、FLAIR法では全体が髄液と同等の低信号域となる。
 [CT]
 上記基準は原則としてCT所見にも適応できる(この場合MRI-T2強調画像の高信号域は低信号域となる)が、慢性期脳出血巣との鑑別が困難なことが多い。

2.出血巣
 [MRI]
  (1)病期によって所見が異なるが、梗塞巣との鑑別には急性期はCTがすぐれ、慢性期はMRIがすぐれる。
  (2)発症後数日間は、T1強調画像で高信号の枠で囲まれた、等もしくは軽度の低信号域、T2強調画像で中心部低信号で周囲がやや高信号を呈する。
  (3)亜急性期では、病巣全体がいずれの場合も高信号域となるが、中心部は等信号域となることもある。
 (4)慢性期では不整形の病変で、中心部がT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号となるが、T2強調画像では、周囲にhemosiderinによる低信号のring状陰影がみられる。
 [CT]
  (1)急性期には限局した高吸収息として描出される。
  (2)血腫吸収後の慢性期には、不整形の低吸収域となり、梗塞巣との鑑別が、困難なことが多い。

3.びまん性白質病変(Leukoaraiosis)
 [MRI]
  (1)側脳室周囲に認められる、いわゆる”cap”ないし”rim”状のT2強調画像の高信号域は血管性の病的変化とは認めない。
  (2)側脳室周囲から深部白質に進展するT2強調画像の不規則な高信号域のうち、その中に斑状の著しい高信号域を認める場合や、病的分布が明らかに非対称である場合は血管性病変の可能性が否定できない。
 [CT]
 上記基準は原則としてCT所見にも適応できる(この場合はMRI-T2強調画像の高信号域は低吸収域となる)。

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