航空留学に関するご質問にQ&A形式でお答えします。
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航空留学QandA

Q.視力・色覚など、航空身体検査基準について教えて下さい。 特に私は近視なので、最近話題の「手術療法」を検討中なのですが…

(2006年5月6日更新)
A.日本では平成13年10月1日付で新しい航空身体検査基準が適用となり、第1種(事業用目的)・第2種(自家用目的等)ともに、事実上「裸眼視力」に関する規定が事実上なくなりました。 前者では左・右とも矯正で1.0以上、後者では矯正で0.7以上あれば合格、コンタクトレンズの使用も認められます。(但し、レンズの「屈折率」に関する規定がありますので、眼鏡使用が前提となる方の場合はご注意下さい。 ちなみにアメリカでは従来より「裸眼視力」に関する規定がありません。)

但し、最近話題となっている「RK手術」や「PRK手術(レーザー光線で角膜に放射線状のスリットを入れたり、削ったりして屈折率を変化させ、視力を矯正する手術療法)」によって視力基準への適合をはかることについては、航空当局によって基本的に認められていません。(「レーシック手術ならOK」というような噂も流れているようですが、少なくとも日本の事業用目的()では一切不可、仮にこれをすり抜けられたとしても事業会社への入社時の判定でまず不合格となります。) これは航空業務に就いている間、気圧変化などの要因で手術痕に何らかの異状をきたす恐れや夜間飛行などの際に視力障害が生じたり、術後の経年変化に係る確証が乏しいなどの理由に基づくもので、安易に手術療法を選択してしまえば、その結果の良否にかかわらず、規定上二度と航空の道を歩むことができなくなってしまう可能性があります。(東京航空局技術部乗員課/ TEL:03-5253-8111)

※日本の航空身体検査基準(航空身体検査マニュアル/平成13年9月改定分)によると、「緑内障」について手術療法を施したケース、及び「第2種(自家用目的等)基準」に限り、「大臣判定」の道を残しています。

一方、FAR(米国連邦航空法)ではこれら屈折矯正手術に関する明確な規定がないのですが、例えば「パイロットメディカルソリューションズ社」という、航空身体検査関連のコンサルティングを専門に扱う会社がそのHPの中で「術後の経過に係り、FAAの方針に基づいて、医療機関から評価を受けることが要求される。」と述べていて、「グレーゾーン」的な扱いになっているようです。


日本人の眼鏡装用率は欧米人の約2倍にも達するらしいのですが、欧米人の中に、会社から日本駐在を命じられて赴任して以来、急に視力が低下した、というような報告があり、また密林地帯など未開拓の地域で生活している人の視力は3.0や4.0も珍しくないそうで、これら多くの事例が、近視を「遺伝的要因」ではなく、「生活環境的要因」で論じるべきものであることを物語っています。

視力回復のために、けっして「マユツバ」ではなく、「生活習慣からの観点」に立つ最近の画期的、かつ思いもよらない報告があります。 その一つが「日本人が平均的に摂る食物は柔らか過ぎる…」といった内容のものです。 日本人は欧米人に比べてあまり食物を噛まない ⇒ アゴを動かす筋肉の発達がよくない ⇒ アゴの筋肉運動には「眼筋」の「コリ」をほぐす連携的なはたらきがあり、これがうまく機能しないとその疲労が固定・慢性化して近視につながる…というものです。

また、最近ご質問が増えてきた「オルソケラトロジー」という近視治療法についてご説明を付け加えておきます。 この方法は各個人ごとの角膜の形状や近視度数に合わせて作製した特殊なコンタクトレンズを就寝中に装用して角膜の形状を一時的に変化させ(つまり角膜表面のカーブに「クセ」をつける)、そのコンタクトレンズを外した後もしばらくは裸眼視力が改善している、という内容のものです。 この場合はもしうまく航空身体検査自体にパスできたとしても、それはあくまでも永続的な裸眼視力の向上を意味するものではなく、一般のエアラインなどではまず認められていません。

《身体的「ハンディキャップ」の話》

航空身体検査においては「色覚異常」なども基本的に認められていませんが(以前は厳格な規定の適用がなされていましたが、最近は多くの局面でかなり規制緩和の方向が見えてきました。)、アークEFIのプログラム修了生の中には「色弱」を特殊な方法で改善させ、アメリカの飛行教官(CFI)の資格まで取得されたケースがあります。(アメリカの場合、航空業務に支障のない程度の色覚異常は認められることになっていますが、最終的な判定は基本的に検査機関側に委ねられており、この方の場合は当初不合格の判定を受け、「改善」後の再検査で合格となりました。)

一般に「色覚異常は遺伝だから治らない。」といわれていますが、実は「色覚異常」という用語自体、医学的な見地で本当に「異常」と言えるのかどうかさえもわかっていないようなのです。(最近では、「色覚異常」という「概念」自体、それは「単なる歴史的経緯に基づく偏見に過ぎない…」という見方が世界的な趨勢を占めるようになってきています。) ある人にとって「赤」という色が、他の人にも同じ「赤」として認識されているかどうかということは、ある人にとっての「音楽」が、ある人にとっての「騒音」であるというケースなどと同様に、ある意味「個性」の領域の問題ではないかということです。 「血の色は赤」ではなく、「血の色は血の色」、ということで、人間はやはり「十人十色」なわけです。 そもそも「赤の警報シグナル」の意味(例えば「火災発生!」)を認識するのに、デジタル全盛のこの時代ですから、敢えて「赤の警報シグナル」である必要などほとんどないと思いませんか?!

今この回答文を書いている私は個人的に複数の大学航空部でグライダー(滑空機:ハンググライダーやパラグライダーとかではありません。)を教えてもいるのですが、毎年大勢の新入生が入部してこられる中で、その操縦練習許可書の申請の際、この理不尽な「トラブル」に、確率的に男性20人に1人の割合(母親からの遺伝形質ですが、ほとんど女性に現れることはありません。)で見舞われることになります。(多くの人は航空身体検査を通じ、生まれて初めてのその「宣告」を受けることになります。) この点、グライダーについてはアメリカにおいてライセンスのシステムこそ日本と大差ない()ものの、航空身体検査では「色覚異常」の検査どころか航空身体検査自体がまったく要求されていないのです!! 一般にはあまり認知されていませんが、与圧なしで10,000m上空を飛ぶことさえあるグライダーこそ、より厳格な航空身体検査基準(この「色覚異常」とかはともかく…)が必要なのでは? という私の思いなどどこ吹く風の実に寛大な考え方です。

※アメリカに「モーターグライダー(動力滑空機)」とかいう法律上の「種類」はありません。 これも寛大なことに、グライダーはあくまでも「グライダー」であって、モーターグライダーも当然「グライダー」のうち、という考え方です。 またオーストラリアでグライダーのトレーニングを行って日本のライセンスに書き替えるということは、両国間の航空システムの違いのために現行ではできませんので念のため。

アークEFIでは、他にも片方の耳が全く聴こえない方が自家用ライセンスを取得なさったケースもあります。(事業用目的でない限り、片方の耳さえ機能していれば航空身体検査の規定上は日本でも海外でも合格です。)

また、少し極端な事例ですが、以前あるアメリカ人のヘリコプターパイロットが地上での給油作業中にローターに巻き込まれる事故に遭い、左腕を上腕部分から失ってしまいました。 しかしながら、彼は長い療養期間を経ながらも、何と再びパイロットとして復帰する道を得たのです。 通常左腕はメインローターピッチとパワーコントロールを担う大事な役割を果たすのですが、そのうちピッチコントロール(コレクティブレバーを上下させる動き)のみを左の義手側で行い、パワーコントロールは操縦桿(右)の側で行えるように機体を改造して当局の認定を受けることができたのです。 そのようなハンディキャップをおもちの方にはもちろん、日本の行政や企業などにも参考になるのではないかと思います。 特にアメリカではどのような身体的ハンディキャップをおもちの方であっても、それを何らかの形で克服している、ということさえ立証できれば、当局は通常ほとんど問題なく資格を与えてくれます。 そうした方々が航空機の操縦をはじめ、とても不可能では? と思えるような業務に従事しているケースは、少なくとも海外ではよく見受けられます。


日/米、並びに各国(航空当局)毎の航空身体検査基準に関する詳しい情報はこちらからどうぞ


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